精神障害者向けグループホーム職員のためのEQ(感情知性)を育む研修プログラムを開発
THU Innovations
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精神障害者向けグループホーム職員のための
EQ(感情知性)を育む研修プログラムを開発

  • 精神障害
  • グループホーム
  • EQ感情知性
  • 研修プログラム

Takamasa
Mizuno

水野 高昌准教授

リハビリテーション学科 作業療法コース

早稲田大学社会科学部卒業後、電機メーカーに就職。退職後、社会医学技術学院の作業療法学科を卒業。作業療法士として錦糸町クボタクリニックにて勤務し、文京学院大学 助手をしながら昭和大学保健医療学研究科精神障害リハビリテーション領域専攻(博士後期課程)を卒業。その後、茨城県立医療大学保健医療学部 助教を歴任し、現在に至る。特定非営利活動法人おれんじはぁと理事長。「精神障害者向けグループホーム職員のEQ感情知性を育む研修プログラムの開発」を中心に研究を行っている 。

グループホーム職員による痛ましい事件を防止するために

精神障害領域においては、長期在院者を減らし、地域での生活へと移行させていくことが喫緊の課題となっている。そのためには、社会的な受け皿の充実が前提となる。現在、都市部では民間の参入なども含め、グループホーム(障害のある人が共同生活を行う小規模住居)設備の充実が図られている。一方、スタッフなど人的資源においては十分なサービス体制が整備されていない現状がある。

水野准教授は、精神障害者のためのグループホーム事業を中核とするNPO法人「おれんじはぁと」の理事長でもあることから、「精神障害者向けグループホーム職員のEQ(感情知性)を育む研修プログラムの開発」に取り組んできた。

その一環として、過去にはグループホームに設置された交流室での利用者同士または利用者と世話人の相互関係に焦点をあて、のべ9ヶ月のフィールドワークを実施。また、首都圏にある通過型グループホームと滞在型グループホームの職員120名を対象として、情動知能尺度(自分自身や他人の感情、欲求を正確に理解し、適切に対応する能力)、看護師の感情労働(自分自身や他人への感情コントロールが必要とされる仕事)についてのアンケート調査を行ってきた。さらには、グループホームに関する過去5年間の国内文献検討、およびグループホーム従事者10名へのインタビューを行うなど、実態調査を重ねてきた 。

精神障害者が利用するグループホームの職員は、不安や悩みといった「感情知性」(自分の感情を認識・理解・制御すること)の活用が求められるにも関わらず、職員自身が感情的な葛藤を処理する機会が少なく、疲弊し、バーンアウト(燃え尽き)してしまうことがある。それは、ときとして利用者への虐待や暴力となって表れ、社会問題化している。

「本研究の目的は 、感情知性の向上につながる研修プログラムを開発することで、援助者による痛ましい事件を防止することにあります。そして、離職率の低下と職場定着を促進させることで、利用者との情緒的交流の広がり、さらには地域生活支援への助けとなることを目指しています 」(水野 准教授)
 

精神障害者への理解も含め、より多くの人に学べる機会を

水野准教授は各種研究成果を踏まえ、グループホームの職員/大学の研修者/ピアサポーター(障害経験があり現在は支援者)と共に検討会を開催。各種調査の結果やマインドフルネスなど、さまざまな要素を融合させ「精神障害者向けグループホーム職員のEQ感情知性を育む研修プログラム」を開発していった。今後は協力機関と連携し、試行にあたっていく。

また、これらの成果を学生教育に反映させることにも注力している。演習科目では「地域ごとの社会資源の活用」や「精神障害を持つ対象者への治療・援助」をテーマに、ペーパーペイシェントを提示。問題解決のための能動的な調べ学習の機会を与え、積極的な関心をもってテーマに取り組んでもらえるよう働きかけている。

「究極の目標としては、精神障害者向けのグループホームが無くなればいいと思っています。特別な住宅ではなく、普通のアパートを借りて、地域の人たちに支えながら生きていく。認知症などは地域の協力体制が成功している例が多くあります。そのためには、精神障害者への理解も含め、より多くの人に学びの機会が増えていくことを望んでいます」(水野 准教授)