グループホーム職員による痛ましい事件を防止するために
精神障害領域においては、長期在院者を減らし、地域での生活へと移行させていくことが喫緊の課題となっている。そのためには、社会的な受け皿の充実が前提となる。現在、都市部では民間の参入なども含め、グループホーム(障害のある人が共同生活を行う小規模住居)設備の充実が図られている。一方、スタッフなど人的資源においては十分なサービス体制が整備されていない現状がある。
水野准教授は、精神障害者のためのグループホーム事業を中核とするNPO法人「おれんじはぁと」の理事長でもあることから、「精神障害者向けグループホーム職員のEQ(感情知性)を育む研修プログラムの開発」に取り組んできた。
その一環として、過去にはグループホームに設置された交流室での利用者同士または利用者と世話人の相互関係に焦点をあて、のべ9ヶ月のフィールドワークを実施。また、首都圏にある通過型グループホームと滞在型グループホームの職員120名を対象として、情動知能尺度(自分自身や他人の感情、欲求を正確に理解し、適切に対応する能力)、看護師の感情労働(自分自身や他人への感情コントロールが必要とされる仕事)についてのアンケート調査を行ってきた。さらには、グループホームに関する過去5年間の国内文献検討、およびグループホーム従事者10名へのインタビューを行うなど、実態調査を重ねてきた 。