健康科学研究科 作業療法学専攻(修士課程)・健康科学専攻 作業療法学分野(博士課程)
作業療法学領域の指導者、研究者として、
生涯研鑽し続ける人材を養成します
修士課程
病気や障がいのある人々の自立(律)的な生活を支援するための作業療法は、いわゆる実践科学として、人の誕生から死に至るまでを守備範囲としています。作業療法士が働く領域は、身体障害をはじめ、精神障害、老年期、発達障害そして在宅地域と多岐にわたりますが、研究分野も今日では、それらの領域における作業療法学固有の視点に加え、医学、教育、職業、社会、およびリハビリテーション工学等と連携しながら、学際的な広がりの中で実施されています。
本専攻では、急性期から地域で在宅生活を送る障がいのある人々や障害及び介護予備軍を対象に、彼らの作業(occupation)の獲得や遂行を支援するための理論や手法に関する基礎研究をはじめ、病気や障害の有無にかかわらず、すべての生活者の「健康の 維持増進」や「障害予防」および「介護予防」に寄与、貢献する応用研究を通して、最新の作業療法学の構築に向けた研究を行います。
具体的な基礎研究としては、手指機能と日常生活動作の分析や心身諸機能と作業活動の解析について、また応用研究では、例えば、高齢者の心身の健康と生活の質(Quality of Life)の維持に必要となる環境調整、地域コミュニティの仕組みづくり、余暇社会活動への参加・貢献に関する研究になります。さらに本専攻のカリキュラムポリシーでもある教育者の養成として、作業療法教育とその教育方法に関する研究も奨励いたします。
作業療法学分野(博士課程)
作業療法学分野では、修士課程で修得した研究能力をさらに高め、作業療法固有の視点に基づく研究を奨励いたします。例えば、病気や障がいのある人々が意味のある作業役割を遂行できるよう、新しい能力評価や支援の手法を開発研究できる人材の養成を目指しています。さらにまた、高齢者をはじめ人々の健康維持や増進、および障害予防や介護予防に向けて、他領域とも連携した学際的かつ新規性に富んだ研究を通し、人々の自立(自律)生活支援に貢献できる教育・研究者を養成します。
専攻長からのメッセージ
新しく総合的な作業療法学を探究していきます
リハビリテーションを推進する国際モデルであるICF(国際生活機能分類)は、病気や障がいのある人々の心身機能や活動、および社会参加を促進する要因として、健康状態はもとより環境因子や個人因子のすべてが双方向に影響し合うとしています。作業療法士は、そのいずれの場面でも、対象者の自立(律)的で満足のいく生活を遂行できるよう支援する専門職として、病気や障害により生じた様々な喪失の回復や、障害予防および介護予防に貢献することを目的とした基礎的および応用的研究を行います。
本専攻は、交通至便な池袋キャンパスに開設されていることから、キャリアを中断することなく学修を深化させ、実践的研究能力を修得することが可能です。チャレンジ精神のある研究意欲あふれる方々の入学を歓迎いたします。
特色
実験研究から作業療法介入の手法まで総合的な力を養成します
障がい者や高齢者の作業遂行能力について、主に身体機能面に関する生体力学的手法による分析を基に、機能回復の方法や生活支援機器、および住環境整備による作業療法介入の手法について研究指導を行います。また、上肢機能障害については、運動学的視点を加味した実験研究も行います。
幼児期から老年期にわたる生活障害の課題解決能力を養成します
幼児期から老年期までを対象に、人々の生活障害を明らかにし、作業療法士の視点による分析と環境調整による生活の再構築、地域生活支援のあり方に関する研究を行います。研究に際しては、学内にとどまらず、臨地・臨床の場でデータを集めることやフィールドワークを推進していきたいと思います。
課程修了の認定及び学位
健康科学研究科 作業療法学専攻(修士課程)
課程 | 修士 |
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在学期間 | 2年以上4年以下 |
修得単位及び条件 |
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学位 | 修士(健康科学) |
健康科学研究科 健康科学専攻 作業療法学分野(博士課程)
課程 | 博士 |
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在学期間 | 3年以上6年以下 |
修得単位及び条件 |
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学位 | 博士(健康科学) |
教育研究及び担当教員
健康科学研究科 作業療法学専攻(修士課程)
障がい者等の動作・活動時の主として身体機能の分析と介入分析に基づく生活支援機器、などを用いた環境調整による作業療法
教授 根本 悟子
障がい者・高齢者の作業遂行能力障害とその予防について、主として身体機能面の運動学・生体力学的手法による分析と機能改善、障害に応じた生活支援機器や住環境などの生活環境調整による作業療法について研究指導を行います。
障がい者等の感覚と外部環境、認知機能に対する他覚的調査・分析・介入について
教授 関 一彦
ADLやIADLの維持・向上に関係する外部環境や五感の状態、障害のプロフィールを踏まえた作業療法プログラムの設計や生活上の注意・支援を分析し、ICFやQOLを意識しながら介入できるよう指導を行います。特に、神経変性疾患領域では、記憶、感情、情動と深く関係する嗅覚障害や、パーソン・センタード・ケア的な視点、五感のバランスの状態と意義などから考えられるよう指導します。
高齢者のWell-being、超高齢社会における地域リハビリテーションに関わる作業療法
教授 菊池 和美
障がいの有無にかかわらず高齢者を含むすべての地域に暮らす人に関わるリハビリテーション、心身の健康とQOLに必要となる介入や環境調整、家族支援、日常生活・生活関連活動の維持、余暇社会活動への参加・地域貢献や自己実現の機会の提供、さらに地域コミュニティの仕組みづくり等に関わる作業療法の現状分析と支援法について研究指導を行います。
障がい者の運動および身体機能と複合的疾患関連の評価法開発
教授 江面 陽一
障がい者・高齢者の直面する様々な生活活動局面に必要とされる身体機能・運動機能改善を目標として、障がいの直接原因となった疾患と各種基礎疾患との複合的な関連を考慮しつつ、より良い治療計画を可能とする基盤確立のため基礎的評価法の提案を目指します。
認知症高齢者とその家族に対する作業療法、作業療法士のキャリア教育
准教授 伊藤 剛
認知症高齢者(特に重度認知症)とその家族に対する心理的援助、作業療法の介入方法について研究指導を行います。また、作業療法士養成課程ならびに卒後における、臨床教育の現状分析と教育方法について研究指導を行います。
認知行動療法の作業療法への応用、回復期リハビリテーション病棟における作業療法士の役割、多職種連携
准教授 下岡 隆之
認知行動療法を作業療法へ応用した支援方法ならびに認知作業療法を用いた支援方法について研究指導を行います。また、回復期リハビリテーション病棟における作業療法士の役割、多職種連携について研究指導を行います。
健康科学研究科 健康科学専攻 作業療法学分野(博士課程)
障がい者等の動作・活動時の主として身体機能の分析と介入分析に基づく生活支援機器、などを用いた環境調整による作業療法
教授 博士(作業療法学) 根本 悟子
障がい者・高齢者の作業遂行能力障害とその予防について、主として身体機能面の運動学・生体力学的手法による分析と機能改善、障害に応じた生活支援機器や住環境などの生活環境調整による作業療法について研究指導を行います。
障がい者等の感覚と外部環境、認知機能に対する他覚的調査・分析・介入について
教授 博士(作業療法学) 関 一彦
ADLやIADLの維持・向上に関係する外部環境や五感の状態、障害のプロフィールを踏まえた作業療法プログラムの設計や生活上の注意・支援を分析し、ICFやQOLを意識しながら介入できるよう指導を行います。特に、神経変性疾患領域では、記憶、感情、情動と深く関係する嗅覚障害、パーソン・センタード・ケア的な視点、五感のバランスの状態と意義などから考えられるよう指導します。
高齢者のWell-being、超高齢社会における地域リハビリテーションに関わる作業療法
教授 博士(老年学) 菊池 和美
障がいの有無にかかわらず高齢者を含むすべての地域に暮らす人に関わるリハビリテーション、心身の健康とQOLに必要となる介入や環境調整、家族支援、日常生活・生活関連活動の維持、余暇社会活動への参加・地域貢献や自己実現の機会の提供、さらに地域コミュニティの仕組みづくり等に関わる作業療法の国内外の現状を概観し、具体的な支援法・効果検証の実践について、研究指導を行います。
神経および筋骨格系に障害をきたす疾患の病態生理解明
教授 博士(医学) 江面 陽一
筋骨格系障害に対する作業療法学の基盤として、本項目では主として小動物実験系を用いた骨系難病の疾患モデル研究を指導します。骨系難病の病因および病態を解明してその本態を理解することから、骨系疾患や高齢者の身体機能障害に対する有効な作業療法の探求と解明を将来推し進められる科学的素養と独創性を身につけることが目標です。
授業科目の概要
健康科学研究科 修士課程 全専攻共通
授業科目の名称 | 講義等の内容 |
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健康科学研究法特論Ⅰ | 健康科学分野、特に臨床における研究の意義と研究論文作成の一連のプロセスを理解し、高度専門職としての実践に貢献する研究方法論を学修することで、専門演習や特別研究を実施するための基礎を作る。具体的には、保健や医療領域における具体的研究例を学ぶことを通して、研究計画の立案、データ収集と分析、研究成果のまとめ方に関する知識・技術を養う。 |
健康科学研究法特論Ⅱ | 院生各自の具体的な研究方法は「健康科学特別研究」で研究指導教員から学ぶことになっている。しかし、異なる研究分野における研究手法など、自分の研究では学修できないような研究内容を知ることも必要である。このような観点から、本科目は「健康科学研究法特論Ⅰ」に続く共通科目として設定し、健康科学分野の研究方法と研究論⽂作成のプロセスをより深く理解し、習熟することを到達目標とする。具体的な研究例を学ぶことを通して、研究計画の⽴案、データ収集と分析、研究成果のまとめ⽅、およびプレゼンテーションに関する知識とスキルを身に付ける。 |
医療統計学特論 | 科学的根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine:EBM)を実現させるために様々な研究が行われており、その結果を判断する上で統計学はとても重要な役割を果たしている。そのため研究デザインの段階で得られるデータの性質や解析手法をきちんと考え決めておく必要がある。本講義では、統計学におけるデータ解析の基礎的な内容から始まり、主要な統計手法について講義を行い、修士・博士課程での研究における統計処理をSPSSを用いて実践する内容とする。 |
医療教育学特論 | 保健医療専門職として、後進育成のために必要な教育学に関する基礎的知識と教育方法を学ぶことが目的である。また、現在の保健医療福祉領域で課題となる多重問題ケースに対応するために多職種連携教育・協働について学び、リーダーシップを担うべく知識と技術の基盤を修得することも目的とする。 |
保健医療管理学特論 | 保健や医療サービスシステムの現状を把握するとともに保健医療に携わる医療関連職種が直面している課題について討議し、サービスシステムを説明し課題を明らかにすることができるようにする。患者ケアシステムを実行する上で不可欠なマネージメントを学び、専門的知識・技術を有効に活用できる能力を養う。他職種の医療サービスシステムを学ぶことで他職種連携についての理解を深め、多職種協働の実践に役立てる。 |
健康医科学特論 | 臨床現場で関わる傷病・疾患は各医療専門職により異なる。しかし、罹患率の高い生活習慣病などに関する知識は、すべての医療専門職に必要である。疾病予防や健康維持の観点からは、成長期や青年期の健康医学の理解も重要である。臨床医学分野の最新の知識を学ぶことは、自らの生涯学習として有用なだけでなく、専門職として接する患者や家族の状況を理解し、専門的判断を構築する際に役立つと思われる。 到達目標:臨床医学一般についての知識を広げ、深めることを目標とする。 |
医科学英語特論 | 科学的研究分野で使われる英語や医療英語は、一般的英語と異なる点がある。英会話を含め一般的英語が得意な人でも、医療や研究分野の専門英語に慣れる必要がある。専門職業人や教育者、特に研究者をめざす大学院修士課程の院生にとって、専門分野の英語文の読解や作成能力は将来必要な基礎学力である。 到達目標:この授業では、健康科学や医学医療分野の英文読解力を向上させることを主目標とする。 |
授業科目の名称 | 講義等の内容 |
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健康科学特別研究 | 指導教員の指導下で修士研究を行い修士論文を作成する研究科目である。2年間の概略は次の通りである。 【1年目】実施予定の研究に関する情報集積を行い、研究の目的と方法を明確にし、研究計画を作成する。研究倫理を理解し、研究倫理教育のコースを修了する。倫理審査の承認後、研究を開始する。 【2年目】研究計画に基づいて研究を遂行し、修士論文を完成させる。研究が計画に沿って進んでいることを確認し、研究結果を分析し考察を行う。研究テーマや研究方法の変更が必要になった場合は、速やかに研究計画を修正する。倫理審査申請書類の再提出など必要な手続きを行う。 到達目標:研究倫理を理解し、倫理審査申請書類の作成を会得する。研究遂行、および論文作成のための基本的スキルを身につける。研究結果をまとめ修士論文を作成する。得られた成果を関連学会等で発表することが望ましい。 |
健康科学研究科 作業療法学専攻(修士課程)
授業科目の名称 | 講義等の内容 |
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身体障害作業療法学特論 | 身体障害者について、ICFモデルにもとづく機能・器質障害に焦点をあて、活動及び社会参加を阻害する要因との関係について学び、障害の解決に有効な手法等について、内外の文献を調べ考察を深める。特に中枢神経疾患により生ずる身体機能障害を医学的に理解し、最新の知見をもと障害に即した適切な評価法・治療法などの臨床場面での展開につなげる。 |
身体障害作業療法学演習 | 身体障害作業療法学特論で学んだ知識・知見をもとに、演習では、主として障害に即した動作解析などの各種評価法を行い検証するための具体的な手法を学ぶ。 |
作業活動分析学特論 | 健常者や肢体不自由者を対象に、人の身体機能と活動・動作の関係を運動学的視点から分析し、身体機能と合理的な動作との関係、効率の良い動作とはどのようなものか探索を深める。具体的には、内外の文献検索による先行研究に基づき、仮説を検証するために必要な動作解析などの分析方法を用いた解決手法を学ぶ。 |
作業活動分析学演習 | 作業活動で必要とされる上肢機能の運動学的理解を深めるための、手の模型の作成を行い、手の動作の成り立ちを運動学・生体工学的に理解する。その上で各種上肢機能障害の影響について分析し、その障害の成り立ちについて理解を深める。また、国内外の先行研究にもとづき、テーマを抽出し、仮説を立て各種測定機器を用いた小規模な測定計画の作成、測定の実施、分析し検討を行う。 |
生活障害作業療法学特論 | 障がいの有無にかかわらず高齢者を含むすべての地域に暮らす人を対象に、機能障害が生活関連の諸活動や社会参加にどのように影響するのか、阻害要因を分析し、解決に有効な手法を探索し考察を深める。具体的には、生活障害に関連した内外の文献を精読し、障害の要因と解決手法について考察を深める。 |
生活障害作業療法学演習 | 国内外の自らの関心のあるテーマに関連する先行研究を精読し、作業療法における対象者の生活障害の評価および介入、さらに生活障害に関連する作業療法の研究方法を検討し、過去の研究動向を把握し、考察を深める。対象者の生活支援当事者や専門家からも情報収集を行い、自らの研究テーマの抽出につなげる。 |
リハビリテーション専門職教育学特論 | 本授業はリハビリテーション専門職の養成校教員を目指す方のための授業である。講義と演習を併用し、リハビリテーション専門職に関する科目を1つ担当したという設定により、カリキュラム構成・シラバス作成・授業計画・模擬授業・授業評価を行う。これにより、担当科目に関する知識を単に伝えるのではなく、養成課程全体を俯瞰した中で、より効果的な授業設計・評価方法を設定できるようになることをねらいとする。 |
健康科学研究科 博士課程 共通
授業科目の名称 | 講義等の内容 |
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健康科学特別研究 | 研究テーマの分野への理解を深め、指導教員の指導下で研究活動を行い、得られた研究成果に基づき、博士論文を作成する。また、3ポリシーを踏まえ、博士課程修了後に自らが有する学識を教授するために必要な能力を培う学修を行う。 |
健康科学研究科 健康科学専攻 作業療法学分野(博士課程)
授業科目の名称 | 講義等の内容 |
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身体障害作業療法学特講 | 本特講では、ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)モデルを軸に、身体障害における心身機能・器質が活動及び参加にどの様な影響を及ぼすか、その相互作用について、主にリハビリテーション医学の視点から探索し、考察を深める。 |
身体障害作業療法学特講演習 | 本演習では、特講を踏まえ、身体障害リハビリテーション医学に関する最新の国内外文献を検索し、各自の研究テーマに関する文献を精読する。精読した文献についてさらに討論を深める。 |
作業活動分析学特講 | 本特講では、生活上の作業を遂行をする上で必要となる心身機能、特に上肢機能と姿勢などに焦点を当てながら、諸条件と作業遂行の関係を分析し、より効率的な作業環境および生活環境を探索し提案に結びつける。 |
作業活動分析学特講演習 | 本演習では、特講を踏まえ、生活上の作業を遂行をする上で必要となる心身機能上肢機能と作業遂行に関する国内外の知見を検索し、各自の研究テーマに関する文献を精読する。精読した文献についてさらに知見を得るために用いられた各種分析方法を中心に討論を深める。加えて、国内外の先行研究にもとづき、各自のテーマに関連した仮説を立て、各種測定機器を用いた小規模な測定計画の作成、測定の実施、分析し検討を行う。 |
生活障害作業療法学特講 | 本特講では、身体障害をはじめ、精神障害、知的障害、および発達障害まで幅広い対象者の教育や就労、地域生活上の障害を明らかにし、社会参加を阻害する要因や課題について包括的な評価や支援の手法を探索し、考察を深める。 |
生活障害作業療法学特講演習 | 本演習では、特講を踏まえ、生活障害に関する全ての領域について、分野ごとの最新の国内外文献を検索し概観する。さらに各自の研究テーマに関連した領域について国内外の関連する先行研究を精読し、作業療法における対象者の生活障害の評価および介入、さらに生活障害に関連する作業療法の研究方法を検討し、過去の研究動向を把握し、考察を深める。また、対象者の生活支援当事者や専門家からも情報収集を行い、自らの研究テーマを鑑み討論を行うことで考察を深める。 |