Keiko
Unoki
鵜木 惠子教授
心理学科
お茶の水女子大学大学院 修了。博士(人文科学)。臨床心理学・健康心理学・ポジティブ心理学を研究分野とし、「携帯端末機器を利用した自己表現技法の開発」、「i-Collage回想法プログラムの開発」、「軽度認知障害者に対するセルフコンパッションを伴うi-Collage回想法の効果検証」を主な研究項目とする。
鵜木 惠子教授
心理学科
お茶の水女子大学大学院 修了。博士(人文科学)。臨床心理学・健康心理学・ポジティブ心理学を研究分野とし、「携帯端末機器を利用した自己表現技法の開発」、「i-Collage回想法プログラムの開発」、「軽度認知障害者に対するセルフコンパッションを伴うi-Collage回想法の効果検証」を主な研究項目とする。
日本における65歳以上の高齢者の割合は28.4%(内閣府, 2020)。世界にも例を見ない高齢化率、長寿化を示している。「人生100年時代」において高齢者が健やかで充実した生活を送るためには、認知症や抑うつ、閉じこもりに対する予防は社会的な課題と言えるだろう。そこで鵜木 惠子 教授が開発したのが、高齢者向けプログラム「i-Collage回想法」である。これは、鵜木 教授がすでに創案していた、ICTを利用した自己表現技法(i-Collage技法)を活用したものである。
まず、高齢者に各自用意してもらった思い出の写真を使い、iPadを使って「今好きな物」「人生前半」などのテーマに合わせたコラージュ作品を制作してもらう。その後、作品について発表してもらい、3〜4人のグループで互いに感想を言い合う。これを隔週で5回連続実施。この取り組みの事前・事後に人生満足度や抑うつなどの尺度、簡単な認知検査、対人交流の人数や頻度を測定。各回の前後には気分の尺度の測定を行なった。
「i-Collage回想法」を実施した結果、人生をテーマにした回では、制作後に緊張不安が低下していること、人生前半のテーマで使用する写真が多い人は抑うつ気分が低いこと、人生前半の作品で自分を中心に置く人は人生満足度が高く、抑うつ気分が低いことなど、様々なことが判明した。
「現在は、従来の回想法実施と効果の比較検討を行っている最中。予備調査で得られた、辛い記憶への対処という課題を解消すべく、マインドフルネスを取り入れて改良したプログラムを実施しました。従来の回想法よりも、高齢者自身が自分の問題解決能力への自信を強めたり、人生満足度を高める傾向が示唆されており、今後は、軽度認知障害の方に対して認知症予防への効果を検証したいと考えています」(鵜木 教授)
コロナ禍を体験したことで、“離れていても、気持ちをどのようにつないだら良いか”ということを多くの人が意識したことだろう。高齢者の多くは一人暮らしである。人とのつながりは対面が基本ではあるが、体が思うように動かなかったり、気候変動や災害などで思うように外に出られなくても、ICTを上手に取り入れることで、人と出会い、つながれる。
「私が目指すのは、そうしたリモートプログラムの展開です。豊島区地域区民ひろば課もこの考えに賛同してくださっており、今後も地域で連携をとりながら、高齢者をとりまく問題解決に取り組んでいきたいと思っています」(鵜木 教授)