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地球温暖化に対する社会の理解の歴史を考える
2021/12/21
経営学科
経営コース

地球温暖化に対する社会の理解の歴史を考える

  • 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 13.気候変動に具体的な対策を

既存文献と新聞データベースから、理解の時代的変化を明確化

地球温暖化の抑制に対して私たちが行動をとる上で、そもそも「急激な気候変動や二酸化炭素排出の課題がいつから顕在化したのか」、そして「いつから知り得たのか」を明確にすることが重要です。私はは、それらの課題に対する研究者・行政機関・マスメディア・一般市民による理解の歴史を明らかにするべく本研究を行っています。論文や報告書、新聞、出版物などから「温暖化」に関する報告や語彙を抽出・整理し、検討していますが、同様の研究は過去には行われていません。

これまでの研究結果を簡単にご紹介しましょう。まず、研究者の理解としては、1824年のJ.フーリエによる地球大気の温室効果の報告に遡ります。しかし、具体的な温暖化のデータ提示と予測が行われたのは、G.S.カレンダーによる1938年の報告が最初でした(Hawkins and Jones, 2013)。行政機関としては、気象庁が1970年代後半から1980年代前半にかけて、長期予測を寒冷化から温暖化に修正。一般向けの図書では、1976年の「氷河期が来る」が8万部の販売を見せたことと、1983、84年に温暖化に関する訳本が国内で出版され、この間に認識が変わったと見てよいでしょう。マスメディアは、海外紙で1960年代から“global warming”の語が散見されるようになりますが、本格的に増えるのはIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の設立年である1988年以降。日本の新聞では「温暖化」の語が1975年頃から少しずつ増え、1988年から海外紙と同じく急増しています。一方、「寒冷化」の語が1960年代から1983年まで認められ、これが近年まで温暖化懐疑論を引きずった一因になったと考えています。

小森 次郎

人文社会学部 経営学科 経営コース 准教授。東京都立大学大学院 理学研究科地理科学専攻博士課程 修了。博士(理学)。科学教育、社会・安全システム科学、地球惑星科学を研究分野とし、「山岳地域の自然災害と防災」、「山岳地域の環境変動」、「環境教育・地学教育の手法研究と実践」を主な研究項目とする。

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