チーム「もったいない+(プラス)」
チーム「もったいない+(プラス)」とは?
健康メディカル学部 健康栄養学科では「食品ロス」について学ぶ講義があります。
「食品ロス」とは食べられる状態であるにもかかわらず、捨てられている食品のこと。日本では2000年から「食品ロス統計調査(農林水産省)」が行われており、家庭からの食品ロスは約半数を占めていると言われています。
食の専門家である管理栄養士にとって、食品ロスの問題を理解し、各々の立場でそれを解決していこうという姿勢は、今後ますます求められると考えられます。
これからの管理栄養士は、こうした難しい課題に立ち向かっていかなくてはならず、そんななか、学生の中にこれらの課題を考えるグループが立ち上がりました。
それが、チーム「もったいない+(プラス)」です。
「焙煎ふすまかりんとう」の開発
チームメンバーの学生らは、食品ロス対策として「廃棄する食品の有効活用」、不足しがちな栄養素として「食物繊維」に着目しました。そして、「小麦ふすま」を探し出しました!小麦ふすまは通常の小麦粉を製粉する過程で捨てられている部分です。
この、小麦ふすまでお菓子を作れないか?東京の郷土菓子である「かりんとう」とのコラボはどうだろう?ここから、チーム「もったいない+(プラス)」のかりんとう開発がスタートしました。
商品としての条件は、下記のとおりです。
- 食物繊維を100g中に3g以上含有させること
- 栄養面だけでなく美味しさも担保されていること
「焙煎ふすまかりんとう」開発の流れ
【STEP1】開発商品の考案
オリジナルかりんとう開発を考案。
かりんとうの作り方が掲載されているレシピ本を調べ、材料の配合割合を比較しながら自作で何度も試作を行った。つぎに、基本かりんとうのレシピを作り、小麦粉の一部を「小麦ふすま」に置換してオリジナルかりんとうを試作した。
【STEP2】製造業者の選定
デパートやコンビニエンスストア、スーパーで販売されているかりんとうの裏の表示を見ながら、東京都内にあるかりんとう製造メーカーを探した。
電話などで「大学オリジナルのかりんとうを作ってもらいたい。」と依頼したがよい返事はもらえなかった。そんななか、大学で取引のある製餡業者が、一軒のかりんとう製造メーカーを紹介してくれた。
【STEP3】製造業者への依頼と相談
試作のかりんとうを持参し、池袋駅から東武東上線で「大山駅」下車徒歩15分。住宅街の中にあるかりんとう工場、中野製菓を訪ねた。「環境・健康にもうれしいかりんとうを作りたい。」
新しい試みのかりんとうであったため、中野製菓の社長や工場長も前向きに検討しながら、工場での試作が始まった。
【STEP4】少量での試作
今までの試作かりんとうは小麦粉100gという家庭用サイズの単位で作っていたが、工場で作るかりんとうは最少量の小麦粉が10kgで業務サイズ。
かりんとうの作り方を学ぶために、学生と教員で工場見学をさせてもらった。
【STEP5】大量生産用の試作
つぎに、実際に稼働する大きな機械で大量生産用の試作が始まった。機械の大きさで、かりんとうの品質や味が変わることがあるからだ。小麦粉50Kgの試作完了。品質も味も小ロットと変わらないかりんとうが完成した。
【STEP6】「焙煎ふすまかりんとう」の完成
完成したかりんとうを「焙煎ふすまかりんとう」と命名。
栄養成分分析を依頼した結果、
食物繊維含有量が3.0g/100gとなり、食品表示法に基づき、「含む」の表示ができるかりんとうができた。
※一般的なかりんとうと比較し、エネルギーは約10%低減、食物繊維は約3倍含まれている。(他商品と比較した栄養成分分析値による)
もったいないプラスの考えていた「環境にも健康にもうれしいかりんとう」が完成した。
【STEP7】パッケージデザイン制作
デザインと印刷を担当する会社との打ち合わせを重ね、もったいないプラスのロゴマークが完成。
学生の商品開発に対する熱意とかりんとうの和のイメージを表現したパッケージを具体的に話し合いながら、18種類のデザインから最終的には2種類のデザインに絞った。
デザインは色合いや文面などを何パターンも組み合わせながら検討した。また、原材料や製造者などの表示方法については、大学の授業でも学んでいる食品表示法を確認しながらパッケージに記載した。
かりんとう開発で学んだこと
- 商品開発における視点
(1)商品化についての全体を考える視点:栄養価だけでなく、人員や製造機器のキャパシティなどを考慮する必要がある。
(2)調理科学的視点:小麦ふすま投入時の味及び食感の変化の理由と対応策を考える必要がある。
(3)マーケティングの視点:パッケージに商品情報をどう盛り込むか?どう表現すれば商品の魅力が一般の人々に伝わるか? - コミュニケーション能力
「商品開発における視点」の(1)(2)ではかりんとうの製造メーカー(職人さん)、(3)ではデザイナーさんと話し合いを重ねた。
相手によって交渉の仕方は異なることを学んだ。 また、自分たちの商品への熱意や思い、商品への希望となぜそうしてほしいのかの説明など、コミュニケーション能力の大切さを学んだ。
かりんとうを使ったレシピの紹介
今回開発した「焙煎ふすまかりんとう」を使ったオリジナルスイーツレシピを学生が考えました。
材料
- 卵 1個
- 牛乳 200cc
- 小麦粉※ 100g
- 砂糖※ 30g
- 溶かしバター 10g
- 抹茶 大さじ1
- 生クリーム 200cc
- 砂糖 大さじ1
- つぶ餡 50g
- かりんとう 適量
料理手順
- ボウルに卵と牛乳をいれて混ぜ合わせ、小麦粉・砂糖・抹茶をふるって加える。さらに溶かしバターをいれ、冷蔵庫で20分休ませる。
- この間に、生クリームに砂糖を加え、角が立つまで泡立てておく。
- 1.の生地をフライパンにいれ、クレープを焼く。
- 焼き終わったら、クレープの端が重なるように縦に並べ、2.を塗っていく(外側にも塗るので少し残しておく)。
- 塗り終わったら、端につぶ餡をのせて巻き、ラップで包んで5分ほど冷蔵庫で冷やす。
- 冷えたら、残りの生クリームを外側に塗り、上に砕いたかりんとうをまぶして完成。
材料(18cmスクエア型1台)
- バター 80g
- グラニュー糖 50g
- 卵白 2個分
- ホワイトチョコ 80g
- キルシュワッサー 5g
- 薄力粉 80g
- アーモンドプードル 20g
- ベーキングパウダー 2g
- クルミ 25g
- かりんとう 25g(小2~3本)
- 刻んだホワイトチョコ 20g
- 粉糖 適量
料理手順
【下準備】
- バターと卵白は常温に戻す。
- 粉類は合わせてふるう。
- 80gのホワイトチョコは湯せんで溶かしておく。
- クルミは160℃のオーブンで約10分ローストし大きめに砕く。
- かりんとうはクルミと同じ大きさに大きく刻んでおく。
- 型にオーブンシートを引き、オーブンは160℃に予熱しておく。
【手順】
- 常温に戻したバターをハンドミキサーでクリーム状になるまで練る。その後、グラニュー糖をいれ、白っぽくふんわりとするまで混ぜる。
- 卵白を5回に分けていれ、その都度よく混ぜる。
- 溶かしたホワイトチョコ・キルシュワッサーをいれ混ぜる。
- 粉類を一度にいれ、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
- クルミ・かりんとう・刻んだホワイトチョコをいれ均一になるように混ぜる。
- 型にいれて平らにならし、160℃のオーブンで25分焼く。
- 焼きあがったら10㎝くらいの高さから落として焼き縮みを防ぐ。
- 冷めたら切り分け粉糖を振って完成。
材料
【土台】- かりんとう 2袋
- きな粉 30g
- 溶かしバター(無塩) 50g
- 牛乳 125ml
- 上白糖 10g
- ゼラチン 5g
- 水 10ml
【黒ごまプリン液】
- 絹ごし豆腐 150g
- 無調整豆乳 160ml
- 牛乳 125ml
- 上白糖 50g
- 黒ねりごま 50g
- 粉ゼラチン 10g
- 水 40ml
料理手順
【下準備】
- 【土台】のゼラチンと水を各々混ぜてふやかす。
- 絹ごし豆腐は水を切っておく。
【土台作り】
- かりんとうをジップロックにいれて砕き、きな粉・溶かしバターを加えてよく混ぜた後、型に敷き詰める。
- 【土台】の牛乳をレンジで温め、上白糖を加え、ふやかしたゼラチンを加えて混ぜる。
- 2.を1.に流し込み、冷蔵庫で冷やし固める。
【黒ごまプリン液】
- 水を切った豆腐を裏ごしして潰す。
- 材料をすべて混ぜ、700Wのレンジで2分半加熱し、ふやかしたゼラチンを加えて溶かす。
【仕上げ】
- 土台が固まったら、プリン液を流し込み、冷蔵庫で冷やし固める。
材料
- ホワイトチョコレート 90g
- 抹茶パウダー 2g
- キルシュ 3ml
- かりんとう 50g
料理手順
- ホワイトチョコレートを細かく割り、湯煎にかける。
- チョコレートの中に抹茶パウダーをふるいいれ、だまにならないようにやさしく混ぜる。
- キルシュを加え、少しとろみがつくまで冷ます。
- かりんとうは5mm程度に砕いておき、半量加えてさっくり混ぜる。
- 固まりだしたら残りのかりんとうを加え、2周ほど回す。
- 型に流し、冷蔵庫で冷やし固める。
もったいないプラスメンバーについて
商品開発の楽しさと奥深さを学べた!
ついに大学オリジナルのお菓子が完成してとてもうれしいです!チームのメンバーの一員として関わらせていただいてたくさんのことを学ぶことができました。ふすまをいれる量を少し増減しただけでも出来上がりのかりんとうの食感に大きく影響してくることを工場見学や試作のかりんとうを試食することで肌で感じることができました。また、一つのかりんとうができるまでに、大学側のオリジナルのお菓子を開発したい、中野製菓さんの「かりんとうのおいしさを一人でも多くの人に知ってほしい」という気持ちが伝わってきました。その思いを汲みとって開発に関わっていくうちに、自分自身もかりんとうへの思い入れが強くなっていくのを感じました。これらの経験を通して、改めて商品開発の奥深さと楽しさを学ぶことができました。これからは、大学オリジナルのお菓子として、たくさんの方々にこのかりんとうを食べていただき、食品ロスと自分自身の健康について考えていただくキッカケになることを願っています。
一つのものをチームで作ることには障害がたくさんあります。目指す目標を一つに絞ったとしてもそのために道筋は決して一本ではなく、正解の道は存在しません。そのため、何度でも話し合い、交流し、お互いのイメージを擦り合わせていかなければなりません。商品開発には知識はもちろん必要ですが、一つの目標を見続ける熱意と、志を共にする仲間との連携・協力が何よりも大切だと思います。このチームではその大切さをしっかりと実感することができました。
1つのものを完成させるということはわからないことだらけで失敗が多く重なってしまいます。長い間作り続けていたものを放棄してもう一度やり直しという厳しいこともありました。しかしチームのみんなでアイデアを出し合い試行錯誤をくり返すことで仲が深まり、上手く行ったときの喜びが倍になるということを実感できました!
今までにないものを作りたい。それを食べて喜んでもらいたい。壁にぶち当たったとき、乗り越える原動力になったのはこの言葉でした。みんなが同じ思いだったからこそこの商品ができたのだと思います。そんな思いが詰まったかりんとうはおいしいに決まってます!
かりんとうの制作は一から手探りの状態で始まったため、右も左もわからず、多くの壁にぶつかりました。しかし、その度に仲間と協力しあい、乗り越えることができました。商品開発は果てしない道のりではありますが、その分、ゴールにたどり着いたときの喜びもひとしおです。そして、ゴールにたどり着くためには商品にかける情熱と仲間との協力が不可欠です。このチームにはそれを教えてもらいました。
今までにない新しい試みでした。そのため、うまくいかないことや障害がたくさんありました。しかし、そのたびに「もったいない」の言葉を思い出し、小麦ふすまのかりんとうを世間の皆さまに味わってもらいたい一心で取り組みました。大学独自のお菓子というのは珍しく、目を引くものと思います。ぜひ一人でも多くの方に、このかりんとうを味わってもらいたいと思っています。もし見かけた際には一度お手に取っていただけるとうれしいです。
商品開発という今までに経験したことのないことで、いざ始めてみるとわからないことだらけでした。そんなとき、先輩や同級生と協力し様々な課題を解決できました。もったいないプラスの活動を通し、力を合わせると一人では決してできないことでも解決できるということを改めて実感できました。また、商品開発という1つの取り組みでできたものはかりんとうだけでなく、中野製菓さんや先輩との出会いを作ってくれました。それぞれの努力や情熱の詰まったかりんとう一度手に取ってみてください。
今回の商品開発を通して、メンバーの思い、先生方の思い、メーカーの方々の思いなど、たくさんの方々のお菓子作りにかける情熱を感じることができ、とても貴重な経験になりました。授業で学ぶだけではなく、学んだことを実践する能力、何度も試行錯誤を重ね、失敗しても諦めず形にしていくことの難しさも学ぶことができました。私たちチームの仲間だけでなく、たくさんの人の思いが形になったかりんとう、ぜひ食べていただけるとうれしいです!
指導教員コメント
野口 律奈 教授
「食品ロス対策」から始まった学生たちの試みが、多くの方々のご協力のもと、「帝京平成大学のお菓子」として完成しました。本当にうれしく思います。
「焙煎ふすまかりんとう」は、本学オープンキャンパスで参加者全員に配布されます。
「焙煎ふすまかりんとう」を食べた人全員に、チームもったいないプラスの想いが届くことを願っています。