堺 高興さん
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interview
06

Certified Public Psychologist

公認心理師(国家資格)

その人らしさを取り戻すために
共に解決策を見つける

Profile

堺 高興さん

2015年 健康メディカル学部 臨床心理学科(※) 卒業
(※現:心理学科)
2017年 臨床心理学研究科 臨床心理学専攻 卒業
※2019年度取材

勤務先:
医療法人社団 成仁病院
取得資格:
公認心理師、臨床心理士
カウンセリングなどを通して、様々な年代の患者さんと向き合っています。

01 現在の仕事について教えてください。

カウンセリングなどを通して、様々な年代の患者さんと向き合っています。

精神科病院で心理支援職として働いています。心理検査などで症状を見立て、治療方針を考えて、回復を手助けするのが主な仕事です。患者さんに1対1で向き合うカウンセリングでは、悩みや今後どうなりたいかをうかがい、一緒にその実現方法を考えていきます。患者さんは幼児から高齢者の方まで幅広く、カウンセリングの回数も人それぞれ。1週間に1度、何年か通う人もいれば、2か月ほどで終了する人もいます。子どもが対象なら、遊びながら治療を行うプレイセラピーをしたり、箱庭をつくったり。患者さんに合わせて、様々な方法で治療を行っています。また、最近では子どもの発達支援や、就労支援のための集団プログラム(集団セミナー)などを実施することも増えてきました。

なぜこの仕事を目指そうと思ったのですか?

「人の心」に興味を持ったこと、身近に精神疾患のある親族がいたことがきっかけです。

心理職を目指そうと決めたのは、大学受験を目前にした高校3年生のころです。実はそれまでは心理支援職ではなく、民俗学者になりたいと思っていました。昔話を読み解き、古くから人の心のなかにある普遍的な心情を学んだりする民俗学は、意外にも心理学と共通点があるなと。実際私は妖怪マンガが好きで、民俗学に興味を持ち、次第に妖怪を生み出す「人の心」に注目するようになりました。「自分ってなんだ?」という疑問を持つ時期でもありましたし、身近に精神疾患を持つ伯母もいて、「人の心」についてもっと深く知りたいと思ったのです。それに加え、当時、プロファイリングをテーマにした海外ドラマが好きだったこともあり、人の心を読み解く心理支援職という職業への憧れもありましたね。

心理支援職になるなら、病院で働きたいという思いで「臨床心理学科」を選択。

心理支援職になるなら、病院で働きたいという思いで「臨床心理学科」を選択。

心理学を学ぶにあたり帝京平成大学を選んだのは、「臨床心理学科」があったから。他大学もいろいろと見ていたのですが、心理学科は文学部のなかにあることが多く、“臨床”とうたっているところは少なかったのです。私にやさしく接してくれていた伯母も病院で治療をしていましたし、私にとって心理支援職の活躍する場所と言えば、病院。心理職に就くなら病院で、という思いがあって、医療現場における心理学をしっかり学ぶことができるTHUの臨床心理学科に進学を決めました。

実際に働いてみてどうですか?

心理支援職は、マジシャンや魔法使いではないと実感しています。

学生時代には、心理支援職になれば、相手と対峙して話をするだけでその人の気持ちがわかり、どうすればその悩みを解決できるのか、すぐに提示できるのだろうと思っていました。しかし、あたりまえではありますが、現実はそうではない。心理支援職は時間をかけて患者さんと話し、どこで躓き、何を悩むのかを聞いたうえで、心理学の理論に基づいて一緒に解決方法を考え、解決に向かう手助けをします。一方的に「あなたはこうだから、こうするといいんです」という言葉は、否定にも依存にもつながるので決して口にしません。すべては患者さんとの信頼関係、会話があってこそ。時折、心理支援職を超人的な力を持つ人のように考える人がいますが、働きはじめて“それは違う”と、より実感しています。

この仕事のやりがいは?

患者さんが、本来持っている力を取り戻していく姿を見られることが、やりがいです。

やはり患者さんの症状がよくなることにやりがいを感じます。例えば、1年前はエネルギーもなく落ち込んでいる様子だった人が、元気になっていき「こんなことにも挑戦してみたんです」などと話をしてくれると、よかったなぁ、と思いますね。この仕事の本質は、本来持っているその人の力を取り戻していくこと。治療を通して、その人らしさを取り戻し、その人らしい人生を送ることができるようになることを常に目指しています。

卒論で先生とフィールドワークに出かけたことが、とても印象的な出来事でした。

02 どんな学生時代を過ごされていましたか?

卒論で先生とフィールドワークに出かけたことが、とても印象的な出来事でした。

友達と一緒に食事に行ったり、勉強したりしたことも思い出に残っていますが、特に印象深いのは、卒論指導の先生のこと。卒論指導はほぼマンツーマンだったのですが、ある時、先生が「フィールドワークに行くか」と言ってくださって、研究していた人物の出身地である和歌山に一緒に行きました。そこまで研究に付き合ってくださる先生は珍しいですよね。とても熱心に指導をしてくださる方で、今でもその先生の主催するカンファレンスに通っています。
また、スーパーバイズ(SV)といって、心理支援職は先輩に自身のカウンセリングについて指導をお願いしたりするのですが、私は大学院時代の先生にSVをお願いしています。心理支援職の仕事は、折に触れて客観性を持って自身のカウンセリングを見つめなおし、指導を受け、技術や知識を深めていくべきもの。正直、勉強はそんなに好きではないのですが、常に学び続けなければいけない仕事だからこそ、指導してくださる先生方と出会えたことに感謝しています。

心理系の科目にすべて出席し、学芸員の資格も取得しました。

資格取得への道のりについて教えてください。

心理系の科目にすべて出席し、学芸員の資格も取得しました。

学部時代は心理の基礎を学ぶ4年間。だからこそ心理学系の科目は出席できるものはすべて出席し、視野を広げるためにもほかの教養科目も積極的に履修していましたね。また、民俗学にもともと興味があったので、学芸員の資格も取得しました。4年次には博物館実習もあり、とても楽しかったですね。興味や知識の幅が広いと、会話が膨らんだり共通点を見つけたりできるので、学芸員の学修や実習経験も、今の仕事に活きていると感じています。

03 受験生へのメッセージをお願いします。

公認心理師誕生により需要がいっそう高まる心理職。一般企業や日常生活にも役立つ心理学に、ぜひチャレンジを。

現在、心理の仕事領域は広がりつつあります。2017年に公認心理師という心理部門では唯一の国家資格が誕生しました。THUでは、これに対応したカリキュラムが組まれているので、心理職を目指すには、よい環境となっています。
また、心理学は一般企業のなかでも人間関係を円滑にするシーンや、プレゼンテーションなどで必ず役立つ学問です。だからこそ心理職を目指す人だけでなく、「人の心のメカニズム」に興味がある人にも挑戦してみてほしいですね。
ただし、心理職を目指す場合にはしっかりとした覚悟を。患者さんと対峙するためには、自分をさらけ出す必要があります。自分自身の内面を理解し、自身の嫌な面にも正面から立ち向かう覚悟がないと務まらない仕事なので、そのことを理解したうえで、この道に進んでほしいと思います。

※公認心理師国家試験受験資格は、所定の単位を修得後、大学院において所定の単位を修めるか、実務経験を積むことで取得可能です。

1日のスケジュール

1日のスケジュール

08:45

出勤

09:00

病院・診療開始

予約者の個別カウンセリング
(一日2~3名ほどのカウンセリングを担当)
心理検査や集団プログラムなどの実施
スケジュールの合間に昼食

18:00

病院・診療終了

20:00

資料整理・カウンセリング記録制作などをして退勤

4年間の学びの流れ

1年次

少人数制のクラスで、幅広い一般教養科目を学び、基礎的な心理学の学修を進めます。

2年次

心理学・臨床心理学を中心に専門科目が多くなり、心理学実験・調査など、演習・実習もスタート。心理の仕事、心の健康について学びを深めます。

3年次

医療現場や学校だけでなく、一般企業でも活躍するようになった心理支援職の仕事について、幅広く学び、キャリアプランを考えます。心理実習(90時間)

4年次

それぞれの進路に沿って学修し、資格取得の準備、卒業研究などを行い、心理の専門性を磨きます。

※公認心理師国家試験受験資格は、所定の単位を修得後、大学院において所定の単位を修めるか、実務経験を積むことで取得可能です。