足関節外側靭帯複合体の詳細な構造と機能の解明
THU Innovations
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足関節外側靭帯複合体の
詳細な構造と機能の解明

  • 足関節
  • 靭帯
  • 足関節外側靭帯複合体
  • 機能解剖学

Akira
Kakegawa

掛川 晃教授

柔道整復学科

専門分野は臨床解剖学、関節の機能解剖学。整形外科に勤務時、第5中足骨近位部の骨折の症例を集め、骨折線の入り方の特徴や骨癒合率などを研究し、第38回日本整形外科スポーツ医学会学術集会のポスター優秀賞を受賞。また、第5中足骨近位部の発生に関与する軟部組織の解剖学的構造を明らかにした論文は、日本整形外科スポーツ医学会で若手奨励論文賞を受賞。現在は外傷(骨折・靭帯損傷)が発生しやすい部位の詳細な解剖学的構造を明らかにする研究を行っている。

研究成果を超音波画像装置による診察、評価につなげる

足関節の外側には、前距腓靭帯と踵腓靭帯、そして後距腓靭帯があり、これらの靭帯によって「足関節外側靭帯複合体」が構成されている。これらの靭帯がどのように連続し複合体を構成しているのか、靭帯線維の詳細な構造はこれまで明らかになっていなかった。掛川 晃 教授は、足関節外側靭帯複合体の詳細な線維構造や、顕微鏡レベルでの組織学的構造の解明に取り組んでいる。

「靭帯を損傷した際の診察では、触診や超音波画像によって体表から損傷した部位を正確に把握することが重要です。また、手術による再建術や修復術が必要になった場合は、関節内から靭帯の正確な付着部を把握しなければなりません。こうした経験から、足関節の靭帯の構造についてもっと詳しく知る必要があると考えたのが研究を始めたきっかけです」(掛川 教授)

本研究は、次の3つのポイントから行われている。①肉眼解剖により靭帯構造の様々なバリエーションを明らかにする。②肉眼解剖や実体顕微鏡を用いて、靭帯同士がどのように繋がり複合体を構成しているのか明らかにする。③組織学的構造を明らかにする。今後の研究では、足関節外側靭帯複合体の切離モデルを作成し、複合体のどの部位がどの程度損傷すると足関節の構造的な不安定性が発生するのか解明する予定である。掛川 教授はこれらの研究によって、足関節外側靭帯複合体の詳細な解剖学的構造や機能を明らかにし、超音波画像装置による診察・評価につなげることを目指している。

靭帯の機能を力学的な実験で明らかにしていくことが目標

掛川 教授は、献体されたご遺体を用いて靭帯のバリエーションの調査を実施。その結果、約70%は前距腓靭帯が上方線維と下方線維の2つの線維束に分かれるタイプであった。また、前距腓靭帯と踵腓靭帯は関節外で、交通線維によって繋がっているが、その線維を慎重に除去すると、前距腓靭帯と踵腓靭帯は外果(外くるぶし)の前下方部で隣り合う独立した付着部を持つことがわかった。足関節内では、前距腓靭帯の下部と後距腓靭帯の前部の靭帯線維が連続していることが明らかに。この連続する靭帯線維は、足関節の様々な角度に応じて形状を変えながら距骨を制御し、安定化させていると考えられている。

「今後の課題は、靭帯の機能的な解明です。足関節外側靭帯複合体のどの部位がどの程度損傷すると構造的な不安定性が生じるのか、靭帯切離モデルを作成して、力学的な実験により明らかにしていきたいと考えています」(掛川 教授)