オンライン服薬指導およびICTを用いた服用期間中のフォローアップの効率化を研究
THU Innovations
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オンライン服薬指導および
ICTを用いた服用期間中のフォローアップの効率化を研究

  • 社会薬学
  • ヘルスアウトカム研究
  • 医療資源の効率化
  • 地域連携

Miwako
Kamei

亀井 美和子教授(薬学部長)

薬学部 薬学科

日本大学理工学部薬学科を卒業後、医療経営を学ぶため筑波大学大学院経営政策科学研究科を修了。その後、昭和大学薬学部、日本大学薬学部の教授を歴任し現在に至る。専門領域は、薬剤給付制度、地域連携、医薬品の適正使用、ヘルスアウトカム研究といった社会薬学。日々、医療の質を改善させるための研究に勤しんでいる。

医療資源を有効活用するために

大学の卒業研究では、各疾患に対してどれくらいの医療費がかかるのか「医療費の分析」を行った亀井教授。薬自体の基礎研究がほとんどだった当時、その視点は珍しかったという。その後は、薬剤師が患者さんの服薬をサポートすることで症状が改善され、無駄な医療費の削減につながることを立証する研究など、医療の質の向上を目指す「ヘルスアウトカム研究」へと進んでいくようになる。それらすべては「医療資源の効率化」という大きなテーマに基づいている。

現在は、厚労省からの要請もあり「薬剤師によるオンライン服薬指導」や「ICTを用いた服薬期間中のフォローアップ」について研究している。その背景には、2040年に高齢者比率が約4割と予想され、医療や介護の担い手不足が深刻化していくことがある。

「遠隔医療」に関しては、離島や僻地の医者不足への対策として以前から推進してきた経緯がある。しかし、「薬剤師によるオンライン服薬指導」は2020年9月に法律が施行されたばかり。コロナ禍が重なったこともあって、環境整備や研修資材の作成が急務となっている。

亀井教授はオンライン服薬指導の実施・実績のある薬局へのヒアリング調査、さらには薬局へのアンケート調査、消費者へのアンケート調査を実施。薬局側と消費者側、双方の利用実態把握を行った。また、薬剤師は調剤した薬剤に対して、患者さんの服用期間中も必要に応じてフォローアップすることが義務付けられている。体調に変わりはないか、副作用はないか、定められた用法で薬を飲めているかなどの確認である。薬剤師の負担が大きいこれらの業務を、ICT技術(フォローアップ専用スマホアプリ)を活用し、より効率的におこなえるかを調査。さらには、アプリ使用における問題点はどこにあるかについて、データを収集・解析していった。

「コロナ禍により、オンラインでのコミュニケーションに抵抗感がない人が増えました。特に20~30代はすでに利用者が多かったです。運用に関する細かい不便さはまだありますが、オンラインであればマスクを外すことができ、患者さんの表情を読み取りやすいなどのメリットもあります。フォローアップのアプリに関しても、年齢問わず有効に活用できることがわかるなど、様々な発見がありました」(亀井 教授)

研究で終わらず、その成果を現場で生かしていく

今後は、オンライン服薬指導をどのように活用すれば、薬物療法の質がどう改善されていくかを検討していく。また、多くの薬局で実施できるよう「オンライン服薬指導」に関する教材を作成。薬剤師や薬学生がトレーニングできる環境の整備を目指している。

「これまでには、良い研究成果が得られた取り組みであっても制度化されないものがありました。今思えば社会実装への努力が足りなかったかもしれないと感じます。現在は、医療機関や薬局、行政など、様々なところと協力しながら活動を進めています。今後も優れた研究結果を社会実装できるよう尽力していきたいと考えています」(亀井 教授)