障害がある人の一般就労の可能性を広げる研究
THU Innovations
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障害がある人の
一般就労の可能性を広げる研究

  • 障害のある人が働くということ
  • 就労移行支援
  • 課題の共有化
  • 職業的アセスメント
  • 職場定着支援

Hiroshi
Morikawa

森川 洋教授

人間文化人間文化学科 福祉コース

順天堂大学大学院体育学研究科保健・体育学専攻修了(体育学修士)、東洋大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻・博士後期課程単位取得後退学。健康社会学研究会(代表)、日本ヘルスプロモーション学会(常任理事)、日本職業リハビリテーション学会などに所属。主な研究分野は、健康社会学、ヘルスプロモーション、職業リハビリテーション。これまで、主に「障害がある人の支援課題の共有化と一般就労のための包括的支援モデルの構築」などを研究している。

一人ひとりの課題を模索し、次の支援の手立てに

障害がある人の働くことに向けた支援を行う就労支援機関。近年、厚生労働省は就労支援機関における利用者の評価(就労アセスメント)について、その人自身の可能性を模索する評価ではなく、基準に達する人と達しない人を振り分ける評価が一部で行われているといった指摘をしている。こうした現状を踏まえ、森川 洋 教授は「障害者就労支援のための就労移行支援事業の役割の検討とガイドラインの開発」を進めている。厚生労働省が指摘する、基準に達する人と達しない人を振り分ける評価とは、いわゆる「総括的アセスメント」。一方、個々の可能性を模索する評価が「形成的アセスメント」だ。

「現場の実践家と共同研究を進める中で、利用者の評価に対する支援者の考え方が、その後の利用者の働くということの選択肢に関わってくると考えるようになりました。総括的アセスメントで人生の可能性を狭めるのではなく、形成的アセスメントを通して働くという選択肢を確立することが、より豊かな暮らしの可能性を広げていくのだと思います」(森川 教授)

「一人ひとりの課題を模索し、次の支援の手立てとなる評価」。これこそが、森川 教授が重要だと考える利用者の評価だ。支援者はそのために得た課題を、利用者やご家族、関係機関とどう共有していくのか、就労移行支援事業所がそのプラットフォームとしての役割をどう果たしていくのかということに焦点を当て、研究を進めている。まず取り組んだのは「課題の共有化」に関する概念分析。併せて、関係機関に「課題の共有化」に関する事例についてインタビューを実施した。現在は、これらの分析、調査等を通じて「課題の共有化」に関する取り組みについて、就労移行支援事業所を対象とした質的・量的調査を進めている。

この研究を機に、これまでの福祉に対する考え方を変えていきたい

利用者が就労支援事業所でトレーニングを受け、一般就労に移行した後も、職場への定着を高めることが必要である。そのために利用者の課題共有において、どのような取り組みを行っているのか、さらにどのような取り組みが、職場に定着する要因となっているのかを明らかにしていきたいと考える森川 教授。

「今後、地域特性や空間情報など踏まえて類型化していくことを考えると、質的研究に加え、量的研究を通して明らかになったことを発信していく必要があると考えています。障害がある人が働くということにおいては、もはや福祉分野のみでは完結しません。障害がある人を社会的弱者ではなく、これからの人生を切り開いていく存在として捉え、様々なパートナーを巻き込んでいくような社会づくりの契機になればと考えています」(森川 教授)